《読書をする女性》
1895年 油彩/板 61.5×48cm
カトー=カンブレジ・マティス美術館寄託
まず、入り口に入って初めの作品がこちら!
「読書をする女性」です。
落ち着いた色合いの部屋で読書をする女性。
モデルとなったのは、マティスの当時の彼女、
キャロリーヌ・ジョブローです。
(長女マグリットの母親です)
彼のスタジオとの類似性を強調したかったため、
壁に絵画がかけられており、芸術性を強調しているのだそう。
こちらの作品は、国家買い上げとなり
彼の作品が世に知れ渡った記念すべき作品です。
《ホットチョコレートポットのある静物》
1900-02年 油彩/カンヴァス 73×60cm
※ポストカード各165円で発売中
続いて目を惹いた作品はこちら!
「ホットチョコレートポットのある静物」
落ち着いた色味が重なり合いながらも、
調和していて見ているだけでも癒されます。
マティスはチョコが好きだったのかな…?
マティスといえば、明るくて華やかな色合いのイメージがあったのですが、初期は落ち着いた色合い、タッチの作品が多かったんですね!
《豪奢、静寂、逸楽》
1904年 油彩/カンヴァス 98.5×118.5cm
ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
※ポストカード各165円で発売中
続いて「豪奢、静寂、逸楽」
私がマティスの作品の中で
一番のお気に入りで惚れ込んだ作品であり、
今回が、な、なんと日本初上陸!!
野獣派の原点といわれる作品で、
35歳の時に描かれています。
この作品をきかっけに「マティスらしさ」が出てくるように!
点画にした理由はたまたまだそうで、
近くで見ると点の大きさがバラバラ!
様々なジャンルに挑戦しているところも素晴らしいです。
素人から観ても分かるように、
今回紹介した《読書をする女性》や
《ホットチョコレートポットのある静物》
とは色合いが全く違いますよね^^
この頃マティスは、印象派の影響を受けており
夏にフランスのリゾート地で過ごした後に描いた作品です。
ラディカルな探求の時代
第一次世界大戦が1914年勃発し、
息子二人や周囲の人間が兵役に行く中、
軍に召集されなかったマティスは
絵画に熱意を注ぎ、様々な挑戦を始めます。
(戦争は1918年まで続きました)
時代背景が作品にも現れつつあり、
周囲の画家たちも古典的な作品を創り始めます。
《コリウールのフランス窓》
1914年9月-10月
油彩/カンヴァス 116.5cm×89cm
※ポストカード各165円で発売中
マティスの作品には「窓」が多数用いられますが、
窓を開けても光がなく、黒で描かれており
戦時中の「不安」や「寂寥感」を
表現しているように感じる作品です。
また、未完成とも言われている作品なので
本人にしか分からない謎に包まれた作品です。
同じ窓を1905年にも描かれていますが、
その時はマティスらしい華やかな色合いです。
《白とバラ色の頭部》
1914年 油彩/カンヴァス 75×47cm
※ポストカード各165円で発売中
こちらの作品は、マティスの長女、
マルグリットを描いた肖像画の一点。
(マグリットを描いた作品は、
300点近くあるのだそう。素敵なお父さん!)
マティスが45歳の時に描いた作品です。
造形的で美しい作品ですよね( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )
当時マグリットはハタチ。
ネックレスが印象的でありつつも、
色合いが優しさと強さを表現しているよう。
この作品の構成は、友人であり画家である
フアン・グリスからヒントを得たのだそう。
彼の作品はキュビズムという絵画様式を用いており、
(※様々な視点から見たイメージを、
一枚の絵の中に表現する絵画様式)
フアン・グリスの作品を調べて観てみると、
まさしくインスピレーションを得ている!
と感じました。素敵な関係ですね!
(フアン・グリスの作品を例えるなら、
ピカソやジョルジュ・ブラックの作品です。)
「ラディカルな探求の時代」では、戦争中の心情や背景が作品に現れていると感じました。
アーティストの感情や時代背景を頭に入れながら作品を鑑賞すると、より作品を感じることができるのでオススメです。
平行する探求-彫刻と絵画-
マティスは絵画と並行して
彫刻の作品創りに取り掛かります。
画像引用元:HENRI the path to color MATISSE:
《背中I》《背中II》《背中Ⅲ》《背中Ⅳ》
1909年、1913年、1916-17年、1939年
ブロンズ/190×116×17cm(背中I)
こちらの作品は、どれも約190cm越え!
約30年の年月を費やし、制作。
美しい女性を表現した後ろ姿で、
Iから順を追って観ていくと
段々と簡素化しているように感じます。
絵画では、点画やキュビズムに挑戦していたり、同時進行で彫刻にも挑戦したりとマティスのアートへの探究心には驚かされました!
どの作品も素敵で時間を忘れて見てしまうものばかり。約30年もの月日を作品に費やすって…!私より年上ですよ!!すごい!
人物と室内
続いて、第4章!
こちらから写真撮影が可能でした。
第一次世界大戦が1918年で終わり、
1919年から拠点をニースに移します。(50歳)
この時代は「ニース時代」とも言われています。
戦争が終わり、多くの芸術家たちの
「ゆかりの地」と言われるニースでの作品創り。
戦後の作品は戦時中とどのような変化があるのか観ていきましょう!
《赤いキュロットのオダリスク》
1921年 油彩/カンヴァス 65.3×92.3cm
ポンピドゥー・センター
まず私が目を惹いた作品はこちら!
「赤いキュロットのオダリスク」です。
色使いが戻ってきたー!!
赤の背景と、ヴェールをまとった健康的な女性。
当時、マティスは異文化に興味を持っており
モデルに様々な衣装を着せ、
ひたすら描くことに専念したのだそう。
「オダリスク」とは
イスラムの君主に仕える侍女のこと。
この絵画のモデルは、元ダンサーの
アンリエット・ダリカレール。
彼女は約7年間マティスの主要モデルを務めます。
「オダリスク」は1920年代の
マティス作品主題と言われています。
《ニースの室内、シエスタ》
1922年 油彩/カンヴァス 65.3×92.3cm
ロッキングチェアのような
斜めがけの椅子に座って
ゆったりとした時間を楽しむ女性。
観ているだけで癒される作品です。
手前には綺麗なお花、奥にも植物が。
色合いも落ち着く色味が多いですね!
マティスは、自分の作品を観て「癒される」「心が落ち着く」と言わたいと買ったていたそうです。「ニース時代」はまさしく観ているだけで落ち着く作品が多い気がしました。ニースの土地柄も関係しているのでしょうか。
広がりと実験
マティスが60代に突入します。
3ヶ月に渡り、タヒチやニューヨーク、
ロサンジェルス、サンフランシスコと旅をし
様々なインスピレーションを経ることに。
また、この頃マティスが息を引き取るまで
家計から助手、モデルまで務めることになる
リディア・デレクトルスカヤとの出会いがあります。
《夢》
1935年 油彩/カンヴァス 81×65cm
この作品は、リディア・デレクトルスカヤが
モデルを務めた作品です。
「モデルがどのようなポーズを取るかを
決めるのは画家ではなく、
自分はただ奴隷のように従うだけなのだ」
とマティスは発言しているように
リディアの姿勢が、意図したものではなく
ナチュラルな休憩中の姿。
モデルを「物」として扱うのではなく
大切にしているところが伝わってきますし、
観ているだけで心が穏やかになる作品ですね!
《夢》のための習作
1935年 グラファイト/紙 24.8×32.3cm
習作=練習のための作品。
デッサンとは意味合いが異なります。
習作も観られるなんて嬉しいですね(*´ー`*)
こちらの作品の、リディアの表情も温かくて好きです。
《座るバラ色の裸婦》
1935年4月-1936年 油絵/カンヴァス 73cm
こちらの作品も、リラックスした
リディアをモデルにした作品です。
色合いも綺麗で、観ているだけで
瞳も心も癒される作品なのですが、
マティスの執念と探究心が現れた作品!
少なくとも13回は描き直しを行なったのだそう。
抽象的に描かれていますが、
個人的に心惹かれたお気に入りの作品です。
マティスとリディアは長期に渡る深い絆で結ばれていた関係だったそうですが、絵画を勉強したことがない私でも、作品のあたたかみや優しさを深く感じられました。彼女に対する想いも作品に現れていたんだそうなぁ…!
ニースからヴァンスへ
70代に近づいたマティスは、
ニースで作品作りをしていましたが
十二指腸癌を患うと共に
第二次世界大戦が勃発したことを受け、
ニースからヴァンスへ移住します。
病気の後は車いすとベッドでの生活ですが、
マティスは作品創りをやめることはありません。
しかし、年齢や体力を考えると絵を描くことは困難に。今回の展示会のパンフレットにもなっている「赤の大きな室内」はマティスの最後の油絵作品の「ヴァンス室内画」シリーズの一作品です。
では、早速観ていきましょう!
《黄色と青の室内》
1946年 油絵/カンヴァス 116cm×81cm
こちら作品は、「ヴァンス室内画」シリーズで
初めに描かれた作品です。
作品に吸い込まれてしまうような
不思議な感覚を感じた作品でした。
黄色と青ってこんなにも心が落ち着くのか…!
部屋に飾りたいと思った作品です。
《赤の大きな室内》
1948年春 油絵/カンヴァス 146cm×97cm
こちら作品は、「ヴァンス室内画」
シリーズの最後の作品です。
素晴らしい作品を描き続けたマティスの
絵画の最後の作品と聞くと、
さみしさと、もっと観たい思いが募ってきます。
こちらの作品は、マティスの
油絵のテーマカラー「赤」がメイン。
「アトリエ」や「窓」も描かれていますね。
マティスの情熱が伝わってくる、
素敵な作品で、長い時間その場を動けませんでした。
切り紙絵と最晩年の作品
マティスは85歳で息をひきとりますが、
晩年は切り絵にシフトチェンジし
創作活動を続けます。
マティスの切り絵創作は、
事前に色が塗ってある紙をハサミで形を切り抜き、
それらを組み合わせる方法。
1930年代にも切り絵作品は作っていましたが、
1940年代(70代)で病気になってしまい
ベッドや車椅子での生活が長くなったからだと言われています。
色彩の魔術師と言われていたマティスですが、切り絵の才能もピカイチ!どの作品も素敵なので早速観ていきましょう^^
《『芸術・文学雑誌ヴェルヴ』表紙デザイン》
おしゃれすぎる…!
絵画や彫刻だけではなく、なんて多彩な!
終戦直後、フランス解放を
象徴することになる作品なのだそう。
マティスの愛を感じますね。
切り絵での評価も高く、雑誌「ヴェルヴ」では、全てのページを特集されている号もあるほど!
この雑誌によって、マティスの晩年の作品を広く知らしめることになったそうです。
ヴァンス・ロザリオ礼拝堂
マティスが80代に差し掛かる頃、
病気をしていた際に介護をしてくれたモニクが
修道女(ジャック=マリー)となり
ヴァンス・ドミニコ会ロザリオ礼拝堂の
制作に着手することに。
建築、内装、装飾、家具、オブジェ、
祭服などを含む全ての総合デザインを任されます。
画像引用元:TOKYO ART BEAT
画像引用元:アトリエ・ブランカ 新ART BLOG
マティスの技術や知識、経験の統括。
ロザリオ礼拝堂を携わった際の
デッサンや資料などを観ることができます。
マティスは製作するにあたって
「この礼拝堂は、私の人生を掛けた仕事の到達点だ。」
「いまも続く探求の果てに、私が選んだのではなく、
運命によって選ばれた仕事である。」
と発言しています。深い…!
画像引用元:TOKYO ART BEAT
今回の展示会のために撮影された
ロザリオ礼拝堂を4K映像で視聴することができます。
マティスが生活していたヴァンスの風景から
ロザリオ礼拝堂の朝から晩までの様子、
ステンドグラスの綺麗な光と
実際の雰囲気を味わうことが可能です。
(実際には礼拝堂内部は撮影禁止なので
かなりレアな映像なんです。)
最後に
私は、アンリ・マティスの存在は
名前だけ知っている程度でしたが、
どの作品も良い意味で
「似たような作品がない」と感じました。
何歳になっても常にアートへの探究心を忘れず
挑戦し続ける姿にも感動しましたし
どの作品も非常に美しかったです。
私がスマホで撮影した作品やポスターでは
細かな部分や繊細なタッチが100%伝わらない!
是非肉眼で作品を観てほしいです。
お子様向けのジュニアプログラムも用意されていましたし、ミュージアムショップのラインナップもかなり豪華でしたので是非足を運んでみてください☆
マティス展概要
『マティス展』
会期:2023年4月27日(木)~8月20日(日)
休室日:月曜日、7月18日(火)
※7月17日(月・祝)、
8月14日(月)は開室
開室時間:9:30~17:30、
金曜日は20:00まで
※入室は閉室の30分前まで
会場:東京都美術館 企画展示室
観覧料:一般2,200 円、
大学生・専門学校生1,300 円、
65歳以上1,500 円、
高校生以下 無料
※日時指定予約制
公式サイト
https://matisse2023.exhibit.jp
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美容、筋トレ、HR/HMが好きなディズニーオタク。ROSEといえば派手髪にメタルTシャツ。将来の夢は年齢不詳の美魔女。