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ノスタルジック・ブックスタンド〜東京古書店めぐり no.2 七月堂(明大前)
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2018.01.17
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投稿者: ムスビメ
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近年、古書店を含め、本屋はどんどんなくなっていると言われ、社会問題視される向きがあるのをご存知ですか?
しかしその一方で、個性的な魅力や特色を持った書店や古書店が、世界中で静かに増えています。
それは、この時代の「本屋」の意味が変わってきたことを示しているのではないでしょうか。
今日は、そんな新しい「本屋」のあり方と気概を見せてくれる、素敵なお店をご紹介します。
老舗出版社による古書店・七月堂(明大前)
京王線と井の頭線の交差する明大前駅の南側。
大学や多くの商店で賑わう北側と対照的に、ぽつんぽつんと、どことなくマイペースにお店の点在する住宅街では、穏やかな時間が流れています。
そんな街の静かな路地裏に、そのお店、七月堂はあります。
七月堂の創業は1973年。
もともとは国内外の詩集を出版したり、学会誌や同人誌を印刷している会社でしたが、ご縁のある翻訳家や詩人たちが、値段をつけてもらえない古書や原書の処分に困っていたことから、古本屋を始めることになったのだとか。
そして、2016年4月に古書を販売する「古書部」としてお店オープンしました。
詩集の集まる本屋
誰かの家の本棚には、どこか一貫した文脈を見つけることができますよね。
自分の本を集めていくことは、一つの編集行為のようなもの。
だから古書店は、「自分だけの好きの文脈」を持っている売り手たちと繋がっていけるかが、お店のカラーを作ります。
七月堂の棚には、もともとのご縁から、さらに詩集好きが常連として本を売りに集まってくるため、国内外の詩集が充実しています。
そのほか、言語、思想哲学、出版、日本文学・文学評論などの読み応えのあるものから、コミック、映画、アート、写真集、絵本、児童文学など、さらには他所では滅多にお目にかかれないようなレア本まで(中には明治時代の汽車の時刻表なんかも)、様々な分野の本たちが店内を埋め尽くしています。
縦横無尽のようにも見えますが、そこには、リリシズムとも言うような一貫した清廉さを感じさせる選書のセンスを感じるはず。
また、七月堂の出版した詩集も古書から新刊まで様々置かれ、すべての本を自由に読むことができます。
飲み物の注文もできるので、奥のソファーに座って目ぼしい本を優雅に読みふけることも。
本を読んで欲しい、愛でて欲しい。
そして、本を愛する人を大切にもてなしたい。
お店のどこかしこから、そんな思いが伝わってくるような気がしました。
本を世の中に循環させたいという思い
「本や雑誌が捨てられてしまう前に、必要としている誰かの手に渡る手助けをしたい」
だからこそ、出版社で古書店をやってみようと決めたのだそうです。
私たちが日々、本や雑誌を手に取る時、その一冊にどれだけの人たちの、どれだけの思いが込められているのかを考えることは、あまりないかもしれません。
著者が思いを込めて言葉をしたため、編集者がそれを編み、デザイナーが装丁を作って、製本業者が手を使って本を作っている。
「この本、もう読まないな」と手放そうとする時、そんなことに思いを馳せたりしないでしょう。
詩集は、特に出版部数の少ないもの。
世に出回っている限られた本たちが姿を決してしまえば、そんな本が存在したことすら残らなくなってしまいます。
「今まで、印刷や出版で本を世の中に送り出してきましたが、これからは世の中から巡ってきた古本で古本屋をやる。印刷をし、本の形に仕上げ、販売し、世の中に放たれた書籍を、新たな読者の手元へ届けていく。この流れができて、初めて本当の意味で本屋になるのではないかと思う。そんな『本屋さん』でありたい」
文化には、流行り廃りがあります。
しかし、ただ淘汰されることを嘆いているのではなく、時代の移り変わりに乗って、新しい道を模索し、切り開いていく情熱もまた、何かを作って生きる人たちに必要な気概なのかもしれません。
人のあたたかさと一緒に、そんな情熱と勇気をもらえる素敵な古書店でした。
DATE
七月堂 (古書部)
【住所】
〒156-0043 東京都世田谷区松原2丁目26【七月堂までの道のり】
京王井の頭線 明大前駅の改札を出て左に。
高架をくぐって、不動産屋の左わきの坂道をまっすぐ下る。
LAWSONの向かい、駐車場と接骨院の間にある路地を右に曲がり、
つきあたりの手前、赤い看板が目印。【営業時間】
月曜日~金曜日 10時~12時 13時~18時
土日 13時~19時
定休日 祝日(そのほか不定休)
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本と珈琲をこよなく愛する、どこにでもいるサブカル女子です。WEBから紙媒体まで幅広く執筆中。日常の小さな素敵に目がありません。映画、ドラマ、小演劇、文学など、物語のあるところをテリトリーとしています。最新記事 by ムスビメ (全て見る)
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