ノスタルジック・ブックスタンド〜東京古書店めぐり no.5 音羽館(西荻窪)

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時代は日々変化し、様々なコンテンツが現れては消えていきます。

そんな中で生き残っていくためには、今までの当たり前に、何か手を加える余地を見つけるセンスが大切です。

 

今までの「当たり前」を、「自分の当たり前」にしてしまわず、「もっとこうだったら面白い」という好奇心を心のままに発揮してしまえる情熱が、次の時代への道を作っていくのではないでしょうか。

 

今日は、そんな風に、新しい時代を切り開いて見せた、力強い古書店をご紹介します。

 

 

本好きを引きつけて止まない古書店


中央線沿線は、戦前から学者やクリエイターが多く住み、脈々と文化が蓄積され、それぞれの街に独自のカラーが形成されています。
JR西荻窪を降り、北口から放射状に伸びる道を吉祥寺側へと数分歩いたところに、今日のお店、古書音羽館があります。


入り口が二つある変わった作りは、お客さんが入りやすいようにとの配慮なのだとか。
可愛らしいイラストの書かれたドアを開けて店内に入ると雰囲気は一変。
打ちっ放しの天井に、踏みしめるとギシッと音を立てる板張りの床。クラシックやジャズなどの静かな音楽が流れ、とてもモダンで落ち着いた空気を醸し出しています。

店内の広さもあるせいか、一度店内に入ると日々の緊張が解け、ついつい長居してしまうこと必至。
品ぞろえは、小説、エッセイ、詩集、哲学、歴史などの人文系を中心に、料理などの実用本や、絵本や漫画、サイエンス系の面白いものから、映画や戯曲、音楽のサブカルチャー分野、写真集などアート系の本も充実しています。
小出版社の新刊本や、フリーペーパーのコーナーも。

 


音羽館の特徴は、幅広いジャンルを扱っている点と、とにかく値付けが安い点。
安く売るということにこだわり、市場の最低価格を調査して本の値段をつけていらっしゃるのだそう。

例えば、神保町にあるような専門書を扱う古書店は、「ここにしかない本を扱っている」という気概を持って高価に値付け、充実した品揃えを保つことで客さんの信頼を維持していますが、一方音羽館は、どんどん本を売り、買い取って、本の循環を重視するスタイル。

 

「お客さんが売ってくれた過去の本を、次の最適な人に渡すこと」「西荻という町にうまくフィットする本棚を作るのが大切」と考え、自分ではあまり選ばず満遍なく様々な本を棚に並べるようにしているのだそう。
この流れが、お店に来るたびに安く良い本に巡り会える仕組みとなり、ファンを引きつける要因の一つとなっています。

 

人気店で回転が早いので、気になる本に出会ってしまったらなら、その一瞬が運命。
安価であることも手伝って、ついつい数冊購入してしまいます。



ニューウェーブ系古書店の先駆けとして

 

音羽館は、2000年の開店以来、新世代古書店を代表する店の一つとして、多くの人々から支持を集めている有名店です。


2000年代以降、それまでの古書店とは異なり、内装や音楽など、店の見せ方や雰囲気にこだわり、本に関連するイベントを開く、いわゆる“ニューウェーブ古書店”が生まれ、全国的に広がりました。この流れが、後にブックカフェという業態を生んでいきます。



店主の広瀬さんは、西荻窪在住のライターや編集者などの有志が運営するマンスリーイベント・西荻ブックマークの中心メンバーとしても活動中です。
過去には、歌人の穂村弘さん、作家の角田光代さん、フリーライターの岡崎武志さん、編集者の都築響一さんなど、豪華なゲストが出演されています。

イベントを通して、幻の名著「『昔日の客』を読む 〜大森・山王書房ものがり〜」の復刊を果たすという大業も残しています。
この本は、かつて大森にあった古書店「山王書房」の店主、故・関口良雄さんによる、心に残る客たちや、尾崎一雄、上林暁、正宗白鳥、三島由紀夫らの作家たちとの交流を通して、本や古書に対する熱意を伝える随筆集です。
絶版になった後、マニアの間で高値で取引されていたそうですが、この本が約40年ぶりの復刊を果たすことができたのは、西荻ブックマークで復刊応援企画が開催された翌年のことでした。
復刊の経緯は、広瀬さんのエッセイ『西荻窪の古本屋さん 音羽館の日々と仕事」(本の雑誌社)に詳しく書かれていますので、ご興味のある方はご覧になってみてください。


これまでの当たり前にとらわれず、ついには古書店店主としての活動を通して、絶版していた本を復刊させてしまう行動力。

それは、広瀬さんの時代に、街に馴染んで行こうとする柔軟性と、本や本の巻き起す出会いへの愛情の深さによる化学変化だと感じます。

 

そんな攻めの姿勢の古書店。

たくさんの刺激をもらえるはずです。

ぜひ足を運んでみてください。

 





DATE

古書 音羽館

【住所】
東京都杉並区西荻北3-13-7

【営業時間】
12:00~23:00

【定休日】
火日



 

西荻窪の古本屋さん 音羽館の日々と仕事
西荻窪の古本屋さん 音羽館の日々と仕事 
広瀬 洋一
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ムスビメ

ムスビメ

本と珈琲をこよなく愛する、どこにでもいるサブカル女子です。WEBから紙媒体まで幅広く執筆中。日常の小さな素敵に目がありません。映画、ドラマ、小演劇、文学など、物語のあるところをテリトリーとしています。

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