ノスタルジック・ブックスタンド〜東京古書店めぐり no.3 古書Doris(ドリス)

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好きなことを仕事にしたい。

そう考える時、私たちは、理想と現在地を比較して、知識や経験など様々な要因が自分に欠けていることを思い、諦めようとします。

でも、「〜だから、できない」「〜でないと、できない」という条件付けは、必ずしも必要なのでしょうか?

 

やりたいことを世界へと表現し、実現していくための種は、もう自分の中にあるのかもしれない。

今日は、そんな可能性を教えてくれるお店をご紹介します。

 

 

 

幻想系古書店の雄、古書Doris(ドリス)

 

上野から一駅北へ。

JR鶯谷駅の南口を降り、東京キネマ倶楽部を右手に通り過ぎ、大通りを渡った小さな商店街「うぐいす通り」。

ここに、今日ご紹介するお店、古書Doris(ドリス)はあります。

 

 

古書Doris(ドリス)は、この2017年年末に鶯谷に移転したばかり。

以前は、隅田川の東側、森下にありました。

 

幻想美術、エロティシズム、魔術、人形など、いわゆる「幻想系」と呼ばれる異端の分野が品揃えの中心。

映画館や美術館とのコラボレーションや、人形の展示会なども活発に行っており、幻想系という括りでは、今や東京で一番メジャーなお店となっています。

休日には、全国から人が訪ねてくるそう。

 

お店の棚は、哲学・思想・心理学・自然科学・音楽・精神、絵本・児童文学・文庫本などの一般的な分野のものから、怪談・奇談・幻想文学・妖精・魔法・魔術・SFなどのオカルトもの、昭和モダン・寺山修司やアングラ、少女・ゴシック・人形などフェティッシュなものまで幅広く扱っています。


澁澤龍彦を核にフランス文学の棚や、タロットーカードとその関連書物を集めたコーナーも見所。
プレミア商品の並ぶガラスケースには、稲垣足穂の「第三半球物語」や「天体嗜好症」が。

 

 

 

古書Doris(ドリス)の成り立ちは、他の古書店とは少し違います。

オープンは2006年、最初はネット書店でした。

 

古書店の店主は、神保町などの歴史ある古書店や新刊書店で経験を積んでいる場合が多いのですが、古書Doris(ドリス)の店主・喜多義治さんは、全くの未経験から趣味でネット書店を開業。

インターネットの普及によって、実店舗を持たなくても書店を開けることを知り、アルバイトをしながら自分の好きな本を仕入れて売っていたそうです。

 

だんだん売買の規模が大きくなり、県内に実店舗を出店し、その4年後には東京進出。

何の経験もないところからスタートし、これだけ多くの人に支持されるお店を築き上げられた秘訣はどこにあるのでしょうか?

 

 

 

本を通した出会いと実現が、一番やりたいことだった

 

「会いに来てくれる人のために、できるだけお店に立ってなきゃいけないと思う。」

喜多さんの意識は、常に目の前の、そして、今までに出会ってきたお客さんたちにありました。

 

本に携わる仕事がしたいと漠然と考えていたのは、10代の後半から。
好きだったのは、現代美術やアート関連の書籍だったそう。

 

現在のお店独特のブランドイメージが出来上がっていったのは、ウェブショップを始めた頃、ダーティーで危ないものが受けたことから。

 

「東京で流行ってる本屋さんの雰囲気を真似て、一般的なアートやデザイン関連にも広げてみたけれど、それよりレベルが低いというのは、自分でも分かっていた。」

 

できていない部分、弱い部分に目を向けるよりも、今、自分の店を評価してくれているお客さんたちに愛されるにはどうしたらいいかを常に考えて模索して行きました。

 

 

東京に出ると決めたとき、これまでに出会ったお客さんをゼロに戻して、東京の人の為だけのお店にはしたくないという思いから、昔からのお客さんたちの特に支持してくれていた、幻想文学や幻想美術の品揃えを中心にお店造りをすると決意。

自分の専門的な経験のなさを逆手に取り、専門店の敷居の高さを払拭した、誰にでも興味を持って立ち寄ってもらえることをコンセプトに据えたことが功を奏し、SNSを通してどんどん注目されるようになっていきました。


お店に置く本が、自分の趣味と完全に一致していなくてもいい。
それよりも、本を通して人と出会えること、本を通して何かが実現していくことが面白い。

 

展示会を多く行うようになったもの、日本の人形作家や、耽美的な雰囲気のイラストレーターの本を好む人たちが全国に一定以上いるというのが、お客さんと話しているうちに見えてきたから。

スタートは、いつも自分とお店を必要としてくれる目の前の人。

そこから、新しい方向性が生まれてきます。


「古本屋の本が売れても本を作った人への利益はゼロ。だから本を売る以外で、作家さんやアーティストに何か貢献したい。展示したり宣伝したりして、もっともっと作家さんの知名度が上がってくれるよう、還元するという意識でやっている。」


本を通して出会い、思いで深く繋がっていく。
古書を売買することを超えた大きな循環を作ることができたのは、喜多さんの中に元々あった人情深さという資質を、古書店という仕事を通して表現できたからでしょう。

 

「例えば、Amazonが中古品の流通の常識をひっくり返すようなサービスを突然始めたりして、古本屋が成り立たない時代になったとしたら、古本にしか興味がない人との関係はその時点で終わる。でも、たくさんの人との繋がりだけは、それだけは財産として持っていける。貯金がたくさんある事よりも、人との繋がりのほうが、後に生かせる財産だったりする。」


好きなことを仕事にしようと思い浮かべるとき、最初はとても漠然としたものですが、実際にやってみて活動していく中で、自分の心を喜ばせることの核を見つけ、追求していったことが、古書Doris(ドリス)の成功の鍵だったのではないでしょうか。

 

東京の東側の下町、人情味あふれるお店です。

ぜひ足を伸ばしてみてください。

 

 

 

DATE


古書Doris(ドリス)

【住所】
〒135-0004 東京都台東区根岸3丁目2ー6 sakura101

 

【営業時間】
11:00~19:00

【定休日】

水曜日


HP http://www.kosyo-doris.com/

Instagram https://www.instagram.com/info_doris/
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Twitter https://twitter.com/info_doris

                 

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ムスビメ

本と珈琲をこよなく愛する、どこにでもいるサブカル女子です。WEBから紙媒体まで幅広く執筆中。日常の小さな素敵に目がありません。映画、ドラマ、小演劇、文学など、物語のあるところをテリトリーとしています。

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